「こどもの本 2020年10月号」2020.10.01
表紙と〈表紙のことば〉を担当させて頂いている 日本児童図書出版協会「こどもの本」、10月号です。 ・・・・・・・・・・ 『秘密結社ヒナゲシ団』 「春はすでに始まっている。」 謎めいた言葉を合図に、人目を忍んで集まったのは、 秘密結社ヒナゲシ団。 手に手に持った風船には、春の花の種とお手紙。 これが彼らの秘密兵器。 「秋蒔きの、春の花の種です。どうぞ、お庭に蒔いて下さい。 春はすでに始まっています。十月吉日 ヒナゲシ団」 飛ばした後は、風任せ。そろそろおやつの時間です。 隠れ家からは、ほら、りんごパイのよい香り。 (表紙のことば・井上コトリ) ・・・・・・・・・・ 「長く厳しい冬は、春へとつながっているのだ」という感覚は、 おそらく多くの人が持っているもので、私自身もそう思ってきましたが、 小さなベランダで植物を育てるようになってから、 「春の始まりは冬ではなくて、むしろ秋なのだ」と思うようになりました。 春に花を咲かせるためには、秋に種や球根を植えるからです。 冬になってからでは、遅いのです。 そんな感覚の変化から、思いついたお話です。 ヒナゲシ団のモデルは、子どもの頃から大好きなドリフ! スペースの都合上、5人ではなく、4人と1匹になりましたが。 わかりやすいブーさんから始めて、長さん、加トちゃん… の順で探して頂くと、わかりやすいです。 今のところ、ヒントを出すと、みんな正解してくれるので嬉しいです。 そして、これは書くべきか迷ったのですが、 ヒナゲシ団が風任せに飛ばした風船の元ネタは、風船爆弾です。 風船爆弾、ご存知ですか? 戦争末期、日本軍が実際に作って(しかも和紙と蒟蒻で…) 偏西風に任せてアメリカに飛ばした(もちろん、届く確信などなく…) それは奇妙な兵器です。 私がその存在を知ったのは、小学生の頃。 ブルーハーツの「風船爆弾」という曲が好きで、 架空のものだと思っていたのですが、 「ああそれ、千葉の海岸から飛ばしたんだよ…」 と、叔母から教わり、大変な衝撃を受けました。 情けなくて、バカバカしくて、悲しくて、腹立たしくて、 でもどこか憎めないヘナチョコ兵器。 風船に乗せていいのは、お手紙と花の種だけです。 (それはそれで、外来種になっちゃうからダメかな?) りんごパイと言えば。 パイとはちょっと違うけれど、下北沢「ラ・パレット」の タルトタタンが好きです。先日食べに行ったら売り切れで、 アップルシナモンケーキを食べました。 ここのケーキは、大きくて優しい味で、全部好きです。 ・・・・・・・・・・ 日本児童図書出版協会 「こどもの本」
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