「こどもの本 2020年8月号」2020.07.22
表紙と〈表紙のことば〉を担当させて頂いている 日本児童図書出版協会「こどもの本」、8月号です。 ・・・・・・・・・・ 『ピアノの音は』 ピアノの音は、まるでお魚。五線の波を泳ぎます。 上がって下がって飛び跳ねて。連なり重なり散らばって。 大きく小さくざわめいて。長く短くゆらめいて。 音のお魚を食べた海鳥は、とてもよい声で歌いだし、 音のお魚を追いかける猫は、愉快なステップ踏みました。 それを見ていたあの子たちは、吹けない口笛吹けたのです。 初めて口笛吹けたのです。 (表紙のことば・井上コトリ) ・・・・・・・・・・ この短いお話(というよりも、詩に近いかもしれません)を 思いついたのは、数年前。ある人のピアノの音を聴いた時でした。 本当に、活きのよいお魚みたいな音で、その人とピアノの周りに、 音のお魚や、それを食べようとして集まってくる鳥たちの姿が 見えるような気がしました。 この「こどもの本」のお仕事を頂いた時、 8月号はあれにしよう!と、実は最初に決めていました。 今回の絵を描くにあたって、懐かしいピアノの楽譜を広げました。 全くモノにはなりませんでしたが…、3歳から高校3年生まで、 一応ピアノを習っていました。 当時使っていた楽譜なんて、実家に置きっぱなしですが、 たったひとつだけ、今でも手元に置いている楽譜があります。 楽譜というより、もはや読み物に近いかも? かなり風変わり!な、サティの楽譜です。 確か、14〜5歳の頃でした。サティを知って、弾いてみたくて、 今はない商店街の楽器屋さんに行きました。 「あるかな?あるかな?」ドキドキしながら棚を探して、 この1冊を見つけた時の嬉しい気持ち!よい思い出です。 (地方の商店街にこんな楽譜が…今思えば、よい時代だったのですね…) そして、発表会でこれをやりたいと言って、先生を絶句させたことも、 今となってはよい思い出です。 サティはもちろん音楽家ですが、楽譜に添えられた文や線画も カッコよくって、今も憧れの存在です。 何気なくこんな洒落た線が描けてしまうのか、実はすごく練習したのか…? う〜ん…謎です! ・・・・・・・・・・ 日本児童図書出版協会 「こどもの本」 |