絵本のラフを描いていた。
主人公の部屋のページだ。
机の上に、何か置物があるといいなぁ、
そうだ、昔家にあったビクターの犬の置物を参考にしよう、
と思って画像検索していたら、
すっかりその犬に夢中になってしまった。
心打たれるエピソードについては聞いた事があったけれど、
犬の名前は知らなかった。
“ニッパー”というらしい。
忠犬のイメージが強いけれど、結構ヤンチャな犬だったようだ。
どこまで本当か、自分からケンカはふっかけないものの、
犬とのケンカには負けた事がないらしい。
何だか、相当かっこいい。
犬という生き物としての形と、
あのエピソードを活かす事を考えると、
ベストショットは横姿なのだと思うけれど、
哀愁漂う後姿がたまらない。
背中の皺が、たまらない。
気がつくと、私は「ニッパー 背中」で検索した画像を
保存しまくっていた。
私がいつか犬を飼える日が来たら、
“おもち”という名前にしようと思っていた。
白くて短毛の犬で、所々茶ばんだ部分があるのだ。
その茶ばんだ部分を、“焦げ目”と呼び、
「おもちは本当にお餅みたいだねぇ」と言って可愛がるのが夢だ。
もし茶ばんだ部分がなかったとしても、大丈夫だ。
その場合は、散歩の後に土がついて汚れた部分を
「焦げ目がついちゃったねぇ」と言いながら拭いてあげればいい。
正月に、呑気に雑煮の餅を食べながら、
「おもちみたいだねぇ」と言って一笑いするのが夢だった。
今も、その夢は変わらない。
でも、“ニッパー”もいいなぁ…と思い始めてしまった。
困った事になった。
どちらか1匹なんて、選べない。
頭の中を、おもちとニッパーが走り回っている。
ニッパーがじゃれて、おもちのお尻を噛んだりしている。
おもちもイヤじゃなさそうだ。
どうやら、2匹は仲良くやれそうだ。
ますます、選べなくなった。
おもちとニッパーという2匹の犬を飼うことが、
私の新しい夢になった。
頑張って稼がなくてはいけない、と思った。
