ここ数日、ひそかに鳩が増え続けている。
ちょっと外に出ると、鳩に会う。
少し歩けば、また鳩に会う。
ふと見上げれば、鳩が飛ぶ。
1番顕著な例は、いつも駐車場に1羽だけでいる鳩が、
3羽に増えている事だ。
辺りの鳩が、およそ3倍に増えているという事だろう。
これはもう、例の祭が近付いているからに、違いないのである。
例の祭というのは、「天狗まつり」といって、
天狗が街中を練り歩きながら、道中で豆まきをするという、
近所の節分的な祭の事である。
大変シンプルな祭なので、街が興奮に包まれるという事はなく、
人々は割と冷静な態度なのだけど、鳩たちの意欲は相当なもので、
「祭のあと」というと、一般的には物寂しい雰囲気が漂うものだけれど、
鳩たちに関してはそれは皆無、むしろ祭は終わらない、といった様子で、
その後1週間ほど、街は豆の潰れたキナ粉臭と、鳩たちの熱気と、
クルルクルル…、という鳴き声に包まれ続けるのである。
その、鳩界の大祭が近づいている。
鳩は、天狗まつりの告知ポスターを読んだり、
天狗まつりについての噂話を理解したりはしないだろうけれど、
本能的に、そろそろじゃないか?と勘付いて集結し、
その日に備えているに違いないのだ。
高下駄を履いた、1人で歩けない天狗の切なさ。
街の人たちの冷静さ。
そして、鳩たちの熱気。
そのバラバラな、自由な感じを想うと、胸がきゅうとなる。
ひとつだって、欠けたらイヤだ。
私も、あの祭を心待ちにしているのかもしれない。
勿論、鳩たちの想いには、とてもかなわないけれど。
