世界中にこんにちは 2015.01.19

inu

遊歩道の向こうから、奔放そうな大型犬を連れた、

小柄なおじさんが歩いて来る。

 

“連れた”と書いてはみたものの、

実際は、“連れ回されている”と言った方が正確だ。

なにしろ、その大型犬の大きさといったら、

“匹”というよりも、むしろ“頭”。

立てば、おじさんの背丈くらいはありそうな上、

まだ若いのか、それともそういう気質なのか、

あらゆる人や物に興味を示しては、思いのままに動き回り、

小柄なおじさんを翻弄していた。

 

「こんにちはー!こんにちはー!」

おじさんは、犬に翻弄されながらも、

すれ違う人すれ違う人に、挨拶をしながら歩いている。

顔の広い人なのか?と思ったら、誰というわけではなく、

それどころか、人・物・事の垣根すら飛び越えて、

無差別に挨拶をしている様子だ。

どうやら、犬の気持ちを代弁しているという設定らしい。

 

そうか、あの大型犬は、世界中に向かって「こんにちはー!」

と言っているのか、と思った。

なんだかすごく、かっこいいと思った。

あの犬になったつもりで、見慣れた道を眺めてみた。

少し、ウキウキした。