見えない銀行 2014.12.03

ginkou

ginkou

しばらく前の事だ。

 

目の前を歩くおじさんが、

ものすごく長くて大きなオナラをしたのだ。

ぶーーーーー、と。

本人にそのつもりはなかっただろうけど、

結構な至近距離であり、

ひっかけられたと言っても、言い過ぎではない。

 

でも、特に腹は立たなかった。

「代わり」に、何かいい事があるだろう、

と思ったからである。

 

おじさんに、長くて大きなオナラをされた事を、

ちょっとした不運(仮に-50とする。普通程度のオナラの場合は-10)

とすると、ちょっとした幸運(仮に+50とする)が、

運を扱う見えない銀行のようなところ

(個人の運が常に±0になるように管理している)から支給され、

何かいい事が起こるだろう、と思ったわけだ。

だから、腹が立つどころか、楽しみにさえしていた。

 

ところが、しばらく経った今、

ちょっとした幸運は、まだ起こっていないのである。

段々、腹が立ってきた。

見えない銀行は、私にちょっとした幸運を、

速やかに支給するべきだ。

 

と、怒ったはずみで、ある事を思い出した。

アメンボの事だ。

少し前に、季節はずれのアメンボを見て、

はしゃいだ事があったけれど、

まさか、あれだろうか…?

 

季節はずれのアメンボを見た事を数値化すると、

大体+30〜50といったところだろう。

何やら、辻褄があってきた。

どうやら私は、アメンボに幸運を使ってしまったらしい。

アメンボには悪いけれど、少し残念だ。

 

それにしても、

おじさんのオナラをアメンボで埋めてくるとは、

見えない銀行は、そつが無いなぁ、と思った。

シロを失う 2014.11.30

shiro

shiro

作業中、あるはずの白い絵の具が見つからない。

よくある事だ。

絵の具箱の中をガサゴソと探す。

 

なかなか見つからないので、思わず口に出す。

「白、白、白…」

 

床に落っこちてはいまいかと、机の下を覗き込む。

「白、白、シロー!」

 

なんだか、シロという名前の犬を

呼んでいるような気がしてきた。

「シーロ、シロ、シロー」

 

シロがどこかに行ってしまって、

悲しいような気持ちになってきた。

私は今も、今までも、

シロという犬を飼った事なんてないのに。

 

絵の具の事など、どうでもよくなって、

シロについて考えた。

シロは白くて、中くらいの大きさで、

少し愚鈍だけど、とても気のいい犬なのだ。

空のお皿をずっと舐めてしまうような、

ボロボロの毛布が、何よりも気に入っているような、

素朴な性質の犬なのだ。

遠吠えが下手クソで、むせているようにしか見えない、

不器用な犬なのだ。

あー可愛いなぁ。シロに会いたいなぁ。

 

歌の歌詞ではないけれど、探すのをやめると、

見つかるというのはよくある事で、

白い絵の具は、目の前の机の上に転がっていた。

 

絵の具なんて、なんだ。

無くしたって、また買えばいいんだ。

シロはお金じゃ買えないんだ。

と、いうような気持ちになった。

 

失うどころか最初から存在すらしない、

シロを失った喪失感で、私の心はいっぱいだ。

不思議だなぁ。

先にご褒美 2014.11.28

20141128

20141128

早々に、表紙のデザインを見せていただいた。

文字を作っていただいたのが、

とても素敵になっていて、嬉しい。

 

今までは、中身が終わってから表紙の絵を描いて、

デザインは本当に最後(多分それが一般的)

だったけど、今回は諸事情で先に進めている。

 

私は、原画より印刷物の方が好きで、

絵だけより、文字が組み合わさった物が好きだから、

デザインをしてもらうのが、いつも本当に楽しみで、

「頑張ったご褒美」みたいに思っていたから、

先にご褒美をもらってしまって、不思議な気分だ。

 

中身の方は、起承転結の転に入った。

後半だけど、まだまだこれから。

 

写真は、色を決めるために描いた、

冬の場面の習作。

キーゼルバッハ部位 2014.11.26

kiessel

kiessel

寒い上に、雨が続いて憂うつなので、

最近覚えた「キーゼルバッハ部位」という言葉を

頭の中でくり返して、なんとかしのいでいる。

 

キーゼルバッハ部位とは、

鼻の中の鼻血が出やすい部位の名前で、

鼻血の原因のほとんどが、

キーゼルバッハ部位損傷によるものという。

 

キーゼルバッハ部位。

なんて愉快な言葉だろう。

鼻血が出やすい部位の名前、

というのが笑いを誘うのは言うまでもないけれど、

その響きがまた軽快で、

意味と音の相乗効果で人の憂うつを吹き飛ばしてくれる、

なんとも優秀な言葉だ。

 

キーゼルバッハ部位。

キーゼルバッハ部位。

もしも私に自意識がなければ、

ずっと口ずさんでいるだろう。

 

キーゼルバッハ部位。

キーゼルバッハ部位。

憂うつが吹き飛ぶよ。

 

キーゼルバッハ・ブイ。

キーゼルバッハ・ブイ。

なんだか、魔法の呪文みたいだ。

どんな魔法かというと、

例えば、イヤなやつに鼻血を出させるとか、

まぁ、そのあたりの魔法だろう。

枯れ木と珊瑚 2014.11.25

kareki

kareki

冬の絵を描いていた。

描き終わった絵を見て、ふと思った。

枯れ木と珊瑚は似ている。

形が似ているという事は、

きっと何かが同じなのだろう。

ちゃんとしてない 2014.11.23

kareha

kareha

今日は暖かかったので、

もしかすると、アメンボがいるかもしれないと、

遊歩道の小川沿いを歩いて探す。

 

調べによると、アメンボの活動は10月まで。

11月は冬眠に入っているはずではあるけれど、

人間でいうところの「宵っぱり」というか、

まだ冬眠せずに、閑散とした小川を悠々と滑っている

少数派がいるかもしれない、と予測したのだ。

 

すっかりオレンジ色になった桜の木の下を、

水面に目を凝らして歩いた。

時々自分の靴が、枯葉を踏むサクッという音が聞こえた。

アメンボは、見つからなかった。

 

ちゃんとしてるなぁ、と思った。

アメンボは、真面目だ。

 

なんだかつまらないような気持ちになって、

帰ろうとした時だった。

例の波紋が見えた。

ちゃんとしてないアメンボが、一匹だけいたのだ。

浮いている枯葉を得意気によけながら、

仲間のいなくなった水面を闊歩している。

 

しばらくそれを眺めて、満足した気持ちで帰った。

あのアメンボが人間だったら、仲良くなってみたいものだ。

きっと、愉快なやつだろう。

ゼニゴケのこと 2014.11.22

zenigoke

zenigoke

夜中に歯を磨いていたら、突然「ゼニゴケ」という言葉が浮かんだのだ。

ゼニゴケ。苔の種類の名前だ。

どうして突然、苔の種類の名前なんて浮かんだのか?

ゼニゴケ、ゼニゴケ…と考えていて、思い出した。

子供の頃、近所だった男の子のあだ名だ。

 

私より、少し年上だったその子は、

元々は永谷園と呼ばれていたのだけど

(下の名前が○○ノリで、ノリ→海苔→永谷園という流れ)、

ある時から「ゼニゴケ」と呼ばれるようになったのである。

近所のおねえさんに、「なんで?」と聞いてみたところ、

「似てるから」との事だった。

その時私は、特に疑問も持たず、

彼の呼び方を永谷園からゼニゴケに切り替えたのだけど、

実はゼニゴケがどんな苔なのか知らなかったし、

当然何がどう似てるのかも分からなかったわけだ。

 

今思えば、悪い事をした。

永谷園とゼニゴケのどちらがマシかという事は、

なかなか測りかねる問題だし、

あだ名を付けられるという事は、

愛されている証拠とも言えるけれど、

ゼニゴケに似ていると言われて嬉しい少年はいないだろう。

そもそも、人間の男の子と苔が似てるって、なんだ。

どういう事だ。

 

今さら謝る事も出来ないけれど、せめてゼニゴケについて知ろう、

と画像検索をして、思わず声が出た。

「似てる…!!!」

髪型だ。

ひょろりとした身体に、毛量のある坊ちゃん刈り。

そっくりだ。

確かに彼は、ゼニゴケに似ていた。

 

悪い事をしたなぁ、と思いつつも、

あまりにそっくりで、笑ってしまった。

それから、せめて髪型の事でよかった、と思った。

きっと今は似ていないだろう。

元気でいるだろうか?

 

それにしても、どうして急に「ゼニゴケ」と浮かんだのか。

それについては、謎のままだ。

次は冬 2014.11.21

20141121

20141121

秋のページが終わった。

出来上がった絵に、トレーシングペーパーをかける時が、

1番楽しいかもしれない。

次は冬のページ。

アメンボの世界 2014.11.20

amenbo2

amenbo2

アメンボが飛ぶ事を知って、俄然アメンボに興味がわく。

引き続き、アメンボについて調べる。

アメンボは、海にもいる。

アメンボは、冬眠する。

 

アメンボは、冬がある事を知っているのだろうか?

知っているから、寝ているのだろうか?

知らないけれど、寝てしまうのだろうか?

知らない気がする。なんとなくだ。

アメンボの世界には、春と夏と秋しかないのだ。

アメンボは、せつない。

でもそれは、

もしかすると、私たちにも、

知らない季節世界があるのかもしれないって事だ。

それを別の生き物は、人間はせつない、

と思っているのかもしれないって事だ。

少しゾクゾクする。

 

アメンボが飛ぶ姿を見てみたいものだ。

単体で飛ぶのだろうか?

徒党を組んで飛ぶのだろうか?

少しゾクゾクする。

アメンボみたいな犬 2014.11.19

amenbo

amenbo

アメンボみたいな犬になつかれそうになる。

私は犬(特に短毛)が好きなので、内心はしゃいでいたのだけど、

飼い主の人は、とても良識のある人だったらしく、

「よその人に飛びついちゃいかん」と、

口には出さないけれど、そういうような雰囲気で、

アメンボの紐をググイと引っ張って躾けたので、

アメンボは私になつきそびれ、

私はアメンボになつかれそびれた。

少し残念だった。

 

アメンボ(虫)の事が気になり始めたので、帰ってアメンボについて調べた。

アメンボはカメムシの仲間だ。

アメンボは飛ぶ。