「てがみがほしいみつあみちゃん」の主人公、
元気な赤毛の女の子「みつあみちゃん」の、シリーズ2作目が完成しました。
タイトルは、「みつあみちゃんとハルノオトズレ」です。
“みつあみちゃんとそらいろくんは、春が訪れた日の夜に、
一瞬だけ咲く不思議な花・ハルノオトズレを見に出かけるのですが…”
前作の「てがみがほしいみつあみちゃん」は、
みつあみちゃんとそらいろくんのキャラクターが前面に出たお話でしたが、
今作は、みつあみちゃんの住む世界そのものが、主人公のようなお話です。
もちろん、みつあみちゃんとそらいろくんは、
中心人物としてお話を動かしていきますし、キーパーソンのわにくんや、
不思議な生き物、怪しげな森の人たちも登場します。
今回の企画が通った時(大体の内容が決まって、制作することが決まった時)、
メッセージだとかテーマのようなものは、なくてよいと思っていました。
むしろ、そういうものを努めて設けないことが今回のテーマ、
押し付けがましいものは要らない、と思っていました。
でも、たまたまこれが春のお話だったことで、「3月号にしましょう」
というご連絡を頂いた時、少し気持ちが変わりました。
この絵本を読む頃に、卒園を迎えるこどもたちがいるのです。
メッセージやテーマというわけではないのですが、卒園するこどもたちに、
おめでとうの気持ちを込めた絵本にしたいな、と思うようになりました。
お祝いの音楽のような、花火のような、花束のような、紙吹雪のような。
そんな、できる限り美しい絵本にしたいな、と思うようになりました。
私の画力による美しさなんて、たかが知れているわけですが…
美しさは、決して形だけで作られるのではないはずです。
その時から、私なりに、美しさについて考えながら、少しずつ手直しをして、
今の形に至りました。
美しいということは、きっと、清らかなこと。可愛らしいこと。甘いこと。
素朴なこと。優しいこと。厳しいこと。凛としたこと。潔いこと。儚いこと。
楽しいこと。ドキドキすること。少し寂しいこと。少し悲しいこと。少し切ないこと。
強いのに弱いこと。弱いのに強いこと。汚いようで、きれいなこと。
きらりと光ること。透明感のあること。
明るさの中に闇があること。闇の中に明るさがあること。
賑やかなこと。静かなこと。暖かいこと。冷たいこと。
不思議なこと。どうしてもわからないこと。
単純なことと、複雑なこと。一瞬のことと、永遠のこと。
そういう様々なもの(時に相反するもの)が混ざり合って、
美しさになっていくのだと思います。
美しい風景は、美しい思い出を作ります。美しい思い出は、
いつかふと挫けそうになった時、勇気を作る小さな魔法になるはずです。
だからきっと、美しい風景を持つ人は、美しく生きていけるのだと思うのです。
「春の景色を見に行きたいな」
この本を読んで、そんな気分になってもらえたら嬉しいです。
これから訪れる新しい季節が、皆さんにとって、素晴らしいものになりますように。
(追記)
この企画を繋いで下さった、前任のKさん、引き継いで下さった、後任のAさん、
本当にお世話になりました!
