みつあみちゃんとハルノオトズレ 2019.02.03
「てがみがほしいみつあみちゃん」の主人公、 元気な赤毛の女の子「みつあみちゃん」の、シリーズ2作目が完成しました。 タイトルは、「みつあみちゃんとハルノオトズレ」です。
“みつあみちゃんとそらいろくんは、春が訪れた日の夜に、 一瞬だけ咲く不思議な花・ハルノオトズレを見に出かけるのですが…”
前作の「てがみがほしいみつあみちゃん」は、 みつあみちゃんとそらいろくんのキャラクターが前面に出たお話でしたが、 今作は、みつあみちゃんの住む世界そのものが、主人公のようなお話です。 もちろん、みつあみちゃんとそらいろくんは、 中心人物としてお話を動かしていきますし、キーパーソンのわにくんや、 不思議な生き物、怪しげな森の人たちも登場します。
今回の企画が通った時(大体の内容が決まって、制作することが決まった時)、 メッセージだとかテーマのようなものは、なくてよいと思っていました。 むしろ、そういうものを努めて設けないことが今回のテーマ、 押し付けがましいものは要らない、と思っていました。 でも、たまたまこれが春のお話だったことで、「3月号にしましょう」 というご連絡を頂いた時、少し気持ちが変わりました。 この絵本を読む頃に、卒園を迎えるこどもたちがいるのです。 メッセージやテーマというわけではないのですが、卒園するこどもたちに、 おめでとうの気持ちを込めた絵本にしたいな、と思うようになりました。 お祝いの音楽のような、花火のような、花束のような、紙吹雪のような。 そんな、できる限り美しい絵本にしたいな、と思うようになりました。 私の画力による美しさなんて、たかが知れているわけですが… 美しさは、決して形だけで作られるのではないはずです。
その時から、私なりに、美しさについて考えながら、少しずつ手直しをして、 今の形に至りました。 美しいということは、きっと、清らかなこと。可愛らしいこと。甘いこと。 素朴なこと。優しいこと。厳しいこと。凛としたこと。潔いこと。儚いこと。 楽しいこと。ドキドキすること。少し寂しいこと。少し悲しいこと。少し切ないこと。 強いのに弱いこと。弱いのに強いこと。汚いようで、きれいなこと。 きらりと光ること。透明感のあること。 明るさの中に闇があること。闇の中に明るさがあること。 賑やかなこと。静かなこと。暖かいこと。冷たいこと。 不思議なこと。どうしてもわからないこと。 単純なことと、複雑なこと。一瞬のことと、永遠のこと。 そういう様々なもの(時に相反するもの)が混ざり合って、 美しさになっていくのだと思います。
美しい風景は、美しい思い出を作ります。美しい思い出は、 いつかふと挫けそうになった時、勇気を作る小さな魔法になるはずです。 だからきっと、美しい風景を持つ人は、美しく生きていけるのだと思うのです。 「春の景色を見に行きたいな」 この本を読んで、そんな気分になってもらえたら嬉しいです。 これから訪れる新しい季節が、皆さんにとって、素晴らしいものになりますように。
(追記) この企画を繋いで下さった、前任のKさん、引き継いで下さった、後任のAさん、 本当にお世話になりました! |