6作目の絵本「やまとうみのゼリー」、発売となりました!
青い線と透明水彩の、初夏にぴったりな、爽やかな絵本になりました。
今回の主人公は、タコのタコヤマさん。
タコヤマさんはタコなので、海で暮らしていましたが、
今は山の上で寒天ゼリーのお店を営んでいます。
そんなタコヤマさんの、穏やかで幸せな、ある1日を描いたお話です。
タコが山に住んでいる———。
シュールな設定だな、と思う方もいるでしょうし、
奇をてらった設定と思う方もいるでしょう。
また、絵本的な設定、と、特に引っかかりなく、
すんなり受け入れる方もいるでしょう。
タコヤマさんのお話の世界で、自由に遊んで頂けたら嬉しいです。
書いた本人が、どうこう言うべきではないのですが、
これを読むのは、きっと興味を持って下さった方だと思うので、
タコヤマさんの世界について、少しお話したいと思います。
タコが山に住んでいる———。
この設定に、私は“自由”というものに対する、
希望のようなものを込めました。
タコが山に住んでいて、そしてそれが受け入れられている世界って、
最高に自由だと思うのです。
(では、海にいるタコは不自由なのか?というと、それは違います。
海にいたいタコには、海にいる自由があります。)
勿論そこには、タコ本人の強い意志と努力、情熱が必要です。
常に乾燥の危険にさらされていますし、一歩間違えば、命とりです。
そして何より、周囲の理解も必要です。
自由って、よく聞く言葉のわりに簡単ではなくて、
現実の世界では、なかなかこうはいきません。
私たちは、自由とされているのですが、
本当のところ、よくわからないのです。
自由に生き生きとしている人は、
妬まれたり、変わり者呼ばわりされがちですし、
自由をはき違えて、誰かを平気で傷つけるような人もいます。
どうしてそんな事になるのかというと、おそらくそれは、
私たちが、実は不自由だからなのだと思います。
では、自由になるには、どうしたらよいのでしょう?
正しい答えなど、わかりようもありません。
でも私は、そのために大切な事は、
それぞれが、ほんの少しの寂しさを受け入れること、
なのだと考えています。
例えばタコヤマさんは、海を離れる寂しさを、
海の仲間たちは、タコヤマさんがいなくなる寂しさを、
そして山の仲間たちは、
タコヤマさんが完全に山の者になる事はないのだという寂しさを、
それぞれ受け入れていることでしょう。
ただ、受け入れることと、耐えることは違います。
受け入れる寂しさとは、決して重苦しい類のものではなく、
むしろ爽やかといってもよい類のものなのです。
自由な人は、初夏の風みたいな、気持ちのよい風を作ります。
そして夜になれば、まわりを照らす明かりともなるでしょう。
それはまるで、海の灯台みたいです。
山の山小屋みたいです。
最後に。
このお話を書くきっかけを下さった、編集の香藤さん。
緩いような、それでいて整った、
絶妙な佇まいの本に仕上げて下さった、デザイナーの辻祥江さん。
印刷が難しい透明水彩の色を、
特に緑の美しさを出して下さった、凸版印刷の富岡さん。
それから、タコヤマさんのキャラクターの発想の源になった、
大好きなお店の方々。
読者の方々。
みなさん、ありがとうございました。
タコヤマさんと仲間たちを、どうぞよろしくお願いします。
オマケに。
今回の勝手にテーマ曲は、「ハートランド」です。
30ページあたりから、この曲を流して頂くと、
大変よい感じになります!
