シロウと神様 2015.05.27

kamisama

いつもの散歩道に、白い鳩を一羽見つけた。

ちょこちょこと歩きながら、道沿いの草の芽か何かを啄ばんでいる。

よく見ると、真っ白ではなくて、

胸のところに一箇所だけ、茶色が入っている。

書初め用の太い筆で、「、」をひとつ書いたくらいの大きさの茶色だ。

白い鳩はあまり見かけないので、珍しくて目についた。

 

大学時代は、裏に靖国神社があったので、白い鳩は毎日のように見ていた。

当時は、どうして白い鳩ばかりいるのか不思議だったけれど、

神社で飼っているものらしい。

後で知った事だ。

 

白い鳩を、同じ場所で次の日も見かけた。

胸のところに、茶色がある。

同じ鳩だ。

気付かなかっただけで、この辺に前からいたのかもしれない。

やはり、草の芽か何かを啄ばんでいる。

勝手に「シロウ」と名付けた。

 

その日から、シロウを探すのが日課となった。

シロウを見ると、嬉しくなる。

シロウがいないと、残念になる。

元気かな?と、心配になる。

草の中に白い塊を見つけると、シロウかな?と思う。

やっぱりシロウだと、楽しくなる。

ビニール袋だったりすると、がっかりする。

 

毎日見ているうちに、グレイ鳩たちは群れで行動しているのに、

シロウは一羽で行動している事がわかってきた。

グレイの群れの近くをウロついてはいるのだけど、

何となく壁がある感じで、仲間ではない様子だ。

色が違うから、仲間外れなのかもしれない。

 

シロウはその事を、どう思っているのだろうか?

寂しく思っているのだろうか?

それとも、へっちゃらなのだろうか?

 

どちらにしても、私はシロウの味方だ。

シロウは私の事を知らないし、私は鳩ではないから、

シロウの仲間になる事は出来ないけれど、シロウの味方だ。

何も出来なくても、絶対シロウの味方だ。

 

ふと思った。

私にも、実は味方がいるのだろうか?

気付いていないけれど、自分とは遠い種類の生き物が、

実は見ていてくれるのだろうか?

私がシロウを見ているように。

 

何だかそれって、神様みたい?と思った。

例えば私の神様は、小川に住んでいるアメンボで、

その法則でいくと、シロウの神様は私で。

笑ってしまうほど、規模が小さいけれど。

 

でも実は、もしかしたら、そうなのかもしれない。

神様って、ある生き物を見る、生きる環境も長さも違う、

遠い種類の生き物の視線なのかもしれない。

 

もしそうだとしたら、

私の神様と、いつか視線を合わせてみたいな、と思った。

そしてその生き物に、少しだけ触れてみたいな、と思った。