ブロッコリーの夢 2015.02.16

blocco

夕飯のために買ってきたブロッコリーが、

大変立派だったので、まな板の上に立ててみる。

 

立った。

フラフラする事もなく、とてもバランスよく、

いとも簡単に立った。

あまりに見事なので、しばらく眺めてみる。

 

木だ。

これはもう、木だなぁ、と思う。

 

眺めてばかりいても、夕飯の支度が進まないので、

房に切り分ける。

 

木だ。

房に分けても、やっぱり木だ。

 

ブロッコリーは、木になりたいのだろうなぁ、と思う。

植物だから、「木になりたいなぁ」などとは言わないけれど、

その意気込みは、相当なものに違いない。

 

そんな、夢いっぱいのブロッコリーを食べるのが、

なんだか気の毒になってきた。

ブロッコリーを放っておいたら、

木になる可能性はあるのだろうか…?

 

残念ながら、ないだろう。

調べたわけではないので、定かではないけれど、

木になるどころか、ひょろひょろと細長く伸びたりして、

挙げ句、花が咲いたりするのだろう。

 

ブロッコリーは、自分が理想とする自分から、

どんどん遠ざかっていく自分を知って、

きっと、ひどく落ち込むだろう。

途中までうまくいっていたのに、どこで間違えたのだろう?

と、自分を責めるだろう。

ブロッコリーの運命は、残酷だ。

 

だったら、

夢いっぱいのこの時に、食べてあげたほうがいいのだ、

と思って、シチューに添えて、ムシャムシャ食べた。

美味しかった。