見えない象 2015.02.12
外を歩いていると、時々象みたいな匂いがする事がある。 動物園の、あの、象の匂いだ。
きっと、ゴミの匂いとか、土の匂いとか、 鳩の匂いとか、犬のフンの匂いとか、 色々な匂いが配分よく混じって、そんな匂いになるのだろう。
でも、見えない象がいるのかもしれない、と思う事もある。 そう考えた方が、面白いからだ。
見えない象は、何をしているのだろう? 何を考えているのだろう?
期間限定の透明生活だったら、楽しんでいるかもしれない。 無期限だったら、悲しい気持ちでいるかもしれない。 それとも、もう、すっかり慣れてしまっただろうか?
象の匂いがした時は、私は大げさに鼻をクンクンして、 不思議そうに辺りをキョロキョロ見回す事にしている。 もしも、象が楽しんでいるのだとしたら、 そんな人間を見て、より一層楽しいだろうし、 もしも、悲しい気持ちでいるとしたら、 匂いだけでも気づく人間がいるという事を、伝えたいからだ。 ほんの少しだけど、見えない象のなぐさめになるかもしれない。
象の匂いは、春先によく遭遇する。 もう、そろそろだ。 いつ何時、見えない象とすれ違っても良いように、 さり気なく、でも分かりやすく、 クンクンキョロキョロする準備を、しておかなくてはならない。 |