夕方、いつもの道を歩いていると、
住宅に併設された駐車場で、
かがんで何かを洗っている人がいる。
ホースで勢いよく、バシャバシャと洗っている。
車を洗浄した後に、洗車道具でも洗っているのだろうか?
と思ったら、亀だった。
カレー皿くらいの大きさの、なかなか立派な亀が、
みかん箱くらいの大きさの水槽に入ったまま、
水槽ごと洗われている。
洗い主は、ホースの水をバシャバシャと掛けては捨て、
掛けては捨て、を繰り返している。
亀を水槽から出して、水槽をタワシで擦ったり、
必要によっては、亀本体も擦ったりしなければいけないのが、
面倒なのだろう。
水圧だけで、亀も水槽もきれいにするんだ、
という意気込みが伝わってくる洗い方だ。
亀は抵抗する様子もなく、ガタゴトとなすがままにされている。
亀はどんな気持ちなのだろうか?
やめてほしいのだろうか?何とも思っていないのだろうか?
それとも、楽しんでいるのだろうか?
ふと、自分が子供の頃、ガソリンスタンドの洗車機に、
車に乗ったまま入るのが好きだったのを思い出した。
ひとりで車に乗っていると、ちょっと恐くて、ドキドキして、
自分が強くなったような気がして興奮した。
ガソリンスタンドに行くと、よくせがんだものだった。
一瞬、亀と心が通じたような気がした。
気のせいかもしれないけれど。
