知っている人が亡くなったという話を、人づてに聞いた。
ご病気を抱えていたのは知っていたのだけど、
あまりに突然な気がして、まさか、と思った。
最初は信じられないような、ぼんやりとした気持ちでいたけれど、
しばらくしたらポロポロ涙が出てきて、止まらなかった。
それで、よくよく思い返してみると、
その人にお会いしたのはたった2回ほどで、
しかも、どちらも数分の間だけだったから、驚いてしまった。
どうしてこんなに涙が出るのだろう?と不思議に思った。
その人も絵を描いている人だから、というのはあるかもしれないし、
SNSで、時々おしゃべりをさせていただいた事もあるので、
純粋に2回しかお会いしていない、というのとは、
ちょっと違うかもしれない。
それでも、こんなに涙が出るのは、やっぱり不思議だった。
それで、思った。
私は多分、これからもっとお近づきになれるつもりでいたのだ。
勝手に、そんな気でいたのだ。
今はまだ、その機会がないけれど、
これからきっとそういう機会があって、
少しずつお近づきになっていくのだろうと、思い込んでいた。
現実には、未来の不確かな事なのに、
心の中では現実のようになっていた。
だから、こんなにも涙が出たのだろう。
その人の個展会場にお邪魔した時、初めて会った私に、
「あなたの絵が好きなんですよ」と言って下さった。
優しさもあったのかもしれないけれど、とても嬉しかった。
「私もあなたの絵が好きです」と言おうとして、やめてしまった。
そのタイミングで言ったら、お返しのように聞こえてしまう気がして、
嘘くさく聞こえてしまう気がして、やめてしまった。
もちろん、好きだから個展にお邪魔しているわけなんだけど、
そういう事は、言葉にしないと案外伝わらないものかもしれない。
言えばよかった。本当に。バカだったなぁ、と思う。
白いお花みたいに、清らかで、可愛らしくて、
優しくて、強い人だったと思う。
私はそれを知るほどに近づけなかったけれど、
きっとそういう人だったと思う。
