お花みたいな人 2015.09.03

ohana

知っている人が亡くなったという話を、人づてに聞いた。

ご病気を抱えていたのは知っていたのだけど、

あまりに突然な気がして、まさか、と思った。

 

最初は信じられないような、ぼんやりとした気持ちでいたけれど、

しばらくしたらポロポロ涙が出てきて、止まらなかった。

それで、よくよく思い返してみると、

その人にお会いしたのはたった2回ほどで、

しかも、どちらも数分の間だけだったから、驚いてしまった。

どうしてこんなに涙が出るのだろう?と不思議に思った。

その人も絵を描いている人だから、というのはあるかもしれないし、

SNSで、時々おしゃべりをさせていただいた事もあるので、

純粋に2回しかお会いしていない、というのとは、

ちょっと違うかもしれない。

それでも、こんなに涙が出るのは、やっぱり不思議だった。

それで、思った。

私は多分、これからもっとお近づきになれるつもりでいたのだ。

勝手に、そんな気でいたのだ。

今はまだ、その機会がないけれど、

これからきっとそういう機会があって、

少しずつお近づきになっていくのだろうと、思い込んでいた。

現実には、未来の不確かな事なのに、

心の中では現実のようになっていた。

だから、こんなにも涙が出たのだろう。

 

その人の個展会場にお邪魔した時、初めて会った私に、

「あなたの絵が好きなんですよ」と言って下さった。

優しさもあったのかもしれないけれど、とても嬉しかった。

「私もあなたの絵が好きです」と言おうとして、やめてしまった。

そのタイミングで言ったら、お返しのように聞こえてしまう気がして、

嘘くさく聞こえてしまう気がして、やめてしまった。

もちろん、好きだから個展にお邪魔しているわけなんだけど、

そういう事は、言葉にしないと案外伝わらないものかもしれない。

言えばよかった。本当に。バカだったなぁ、と思う。

 

白いお花みたいに、清らかで、可愛らしくて、

優しくて、強い人だったと思う。

私はそれを知るほどに近づけなかったけれど、

きっとそういう人だったと思う。