ネズミとおじさん 2015.08.21

nezumi

夕方、商店街を歩いていると、

珈琲豆店に入ろうとするおじさんの背後で、

女子高生3人組が、

「気持ち悪いよ」「え〜可愛いよ!」

「気持ち悪いよ」「え〜可愛いよ!」

と繰り返している。

 

少し離れた位置にいる私にも聞こえるくらいだから、

おじさんには確実に聞こえているはずだ。

おじさんの複雑な気持ちを思って、

いたたまれない気持ちになったその時。

 

おじさんの足元を、チョロリと駆け抜ける灰色の塊が見えた。

灰色の塊は、店先に飾られた樽の影に隠れた。

ネズミだ。

そうか。女子高生たちは、ネズミを見ていたんだ。

 

可愛いなぁ、と思った。

その子たちも、いつもは気持ち悪いと思うネズミも、

ついでに本当は関係なかったおじさんも。

珈琲豆店も、ガヤガヤとした商店街も、

ベタベタとした夏の夕方の空気も全部、可愛いと思った。