ちょっとこわい 2015.03.25
そろそろアメンボが目覚める頃かと、 いつもの小川沿いを歩いて探す。 アメンボは、まだいない。 アメンボは、まだ眠っている。 冬眠に失敗して、そのまま目覚めない アメンボもいるのだろう。 ちょっとこわい。
サクラの木の根元に、 イボみたいに飛び火した蕾が開いていた。 上の桜は、まだ咲いていない。 きれいというよりも、ちょっとこわい。
モクレンの花のつぼみが、膨らんでいた。 遠くからみると、白い鳥が、 鈴生りになっているみたいに見える。 可愛いというよりも、ちょっとこわい。
ネコヤナギの花穂が出ていた。 残酷で大きな生き物が、 小さな生き物の群れをむさぼり食べて、 尻尾だけ食べ残して枝に刺したみたいだと思った。 触ってみたら、柔らかかった。 本当に尻尾みたいだな、と思ってしまった。 本当にちょっとこわくなった。
物語ではこういう時、 小さな生き物の群れの中で、 1番小さな子だけが逃げ延びて生き残って、 いつか大きな生き物に復讐するのだ。 それもまた、いつかの春の事だろう。 大きな生き物は、食べ損ねた小さな生き物を、 高を括りながら、でも、いつもどこか怯えながら、 春を過ごすのだろう。
いるはずのない小さな生き物と大きな生き物に、 どちらもがんばれ〜、と思いながら帰った。 |