グレイと黄色 2014.12.28
久しぶりに、新宿に行く。
今住んでいる街は、色々と揃っているから、 電車に乗ること自体、時々になってしまったけれど、 画材を買う時だけは、新宿に行く。 画材店は吉祥寺にもあって、家からの距離は あまり変わらないけれど、やっぱり新宿に行く。
新宿は、好きな街というわけではないけれど、 田舎に住んでいた頃の東京のイメージに1番近いのは、 新宿の街だと思う。 高い建物が沢山あって、人が大勢いて、少し怖くて汚くて、 冷たくて、灰色で、水がカルキ臭いイメージだ。
東京に住んでみて、東京全部がそうなわけではない、 という、考えてみれば当たり前の事がわかった。 私の好きな今の街や、いつか住んでみたい水のある街とは 全然違うのに、あんなにも行ってみたかったのだから、不思議だ。
あの当時の感覚は、いつの間にか消えてしまったし、 今は今の感覚があるから、それでいいのだけど、 新宿に来ると、ふと甦る事があって、懐かしい。 寂しいような、それでいて1人でいたいような、 焦ったような、不安なような、早歩きをしたくなるような。 変な例えだけど、トイレに行きたい時の、あの感じに似ている。 ざわざわ、そわそわ、落ち着かない気分だ。
画材店で用事を済ませて、路を裏手に回ると、 灰色の空に、銀杏の黄色がよく映えていた。 グレイと黄色。 新宿の、東京の色だなぁ、と思った。 少し暗くて、少し怖くて、でも惹かれてしまう色だ。 もしこれが、黒と黄色でも、白と黄色でも、 きっと惹かれなかったと思う。
その色を眺めていたら、そんなに美味しくない空気を いっぱい吸い込んでみたくなった。 深呼吸をしてから、好きな街に帰った。
(*新宿に行ったのは、少し前の事なので、 銀杏はもう散ってしまったかもしれません) |