久しぶりに、新宿に行く。
今住んでいる街は、色々と揃っているから、
電車に乗ること自体、時々になってしまったけれど、
画材を買う時だけは、新宿に行く。
画材店は吉祥寺にもあって、家からの距離は
あまり変わらないけれど、やっぱり新宿に行く。
新宿は、好きな街というわけではないけれど、
田舎に住んでいた頃の東京のイメージに1番近いのは、
新宿の街だと思う。
高い建物が沢山あって、人が大勢いて、少し怖くて汚くて、
冷たくて、灰色で、水がカルキ臭いイメージだ。
東京に住んでみて、東京全部がそうなわけではない、
という、考えてみれば当たり前の事がわかった。
私の好きな今の街や、いつか住んでみたい水のある街とは
全然違うのに、あんなにも行ってみたかったのだから、不思議だ。
あの当時の感覚は、いつの間にか消えてしまったし、
今は今の感覚があるから、それでいいのだけど、
新宿に来ると、ふと甦る事があって、懐かしい。
寂しいような、それでいて1人でいたいような、
焦ったような、不安なような、早歩きをしたくなるような。
変な例えだけど、トイレに行きたい時の、あの感じに似ている。
ざわざわ、そわそわ、落ち着かない気分だ。
画材店で用事を済ませて、路を裏手に回ると、
灰色の空に、銀杏の黄色がよく映えていた。
グレイと黄色。
新宿の、東京の色だなぁ、と思った。
少し暗くて、少し怖くて、でも惹かれてしまう色だ。
もしこれが、黒と黄色でも、白と黄色でも、
きっと惹かれなかったと思う。
その色を眺めていたら、そんなに美味しくない空気を
いっぱい吸い込んでみたくなった。
深呼吸をしてから、好きな街に帰った。
(*新宿に行ったのは、少し前の事なので、
銀杏はもう散ってしまったかもしれません)
