夜中に歯を磨いていたら、突然「ゼニゴケ」という言葉が浮かんだのだ。
ゼニゴケ。苔の種類の名前だ。
どうして突然、苔の種類の名前なんて浮かんだのか?
ゼニゴケ、ゼニゴケ…と考えていて、思い出した。
子供の頃、近所だった男の子のあだ名だ。
私より、少し年上だったその子は、
元々は永谷園と呼ばれていたのだけど
(下の名前が○○ノリで、ノリ→海苔→永谷園という流れ)、
ある時から「ゼニゴケ」と呼ばれるようになったのである。
近所のおねえさんに、「なんで?」と聞いてみたところ、
「似てるから」との事だった。
その時私は、特に疑問も持たず、
彼の呼び方を永谷園からゼニゴケに切り替えたのだけど、
実はゼニゴケがどんな苔なのか知らなかったし、
当然何がどう似てるのかも分からなかったわけだ。
今思えば、悪い事をした。
永谷園とゼニゴケのどちらがマシかという事は、
なかなか測りかねる問題だし、
あだ名を付けられるという事は、
愛されている証拠とも言えるけれど、
ゼニゴケに似ていると言われて嬉しい少年はいないだろう。
そもそも、人間の男の子と苔が似てるって、なんだ。
どういう事だ。
今さら謝る事も出来ないけれど、せめてゼニゴケについて知ろう、
と画像検索をして、思わず声が出た。
「似てる…!!!」
髪型だ。
ひょろりとした身体に、毛量のある坊ちゃん刈り。
そっくりだ。
確かに彼は、ゼニゴケに似ていた。
悪い事をしたなぁ、と思いつつも、
あまりにそっくりで、笑ってしまった。
それから、せめて髪型の事でよかった、と思った。
きっと今は似ていないだろう。
元気でいるだろうか?
それにしても、どうして急に「ゼニゴケ」と浮かんだのか。
それについては、謎のままだ。
